◯ 日曜夜に放送の「NHKアーカイブス」には「新日本紀行」とか「現代の映像」など、実に懐かしい番組が次々とでてくる。

 さすがにNHKだけに、古い番組が良く保存されていて更に最新のデジタル補正技術の向上により見事に再現されている。

 民放においてもラジオにしろ、テレビにしろ、一応資料室をほとんどの局が設けてはいるが、意外と大半の局は自局の過去

 の番組を保存している所が少ない。

 これは予算潤沢なNHKと異なり、民放では番組を収録したテープを放送後、要保存テープ以外は一定期間保存したのち、

 ランニング・テープとして再び他の番組や編集に再使用するので、大半のテープは使い回しにされて、後には残らないと

 いうシステム自体が元々番組保存に適していないということも原因の一つとなっている。

 しかし、局としては残っていなくても、その番組を手がけた制作担当者は資料、研究用として個人的に保存しているケース

 も結構多いのでは無いかと思われる。

 ただ、この場合も昔のテープやビデオは材質が悪く、有ったとしても劣化がかなり進んでいるとは思われるが・・・。

 NHKと比べると歴史の浅い民放は、全国的な内容の素材は少ないかも知れない。

 また時代の古さも格段の差はある。

 しかし、地元に密着した形で過去放送を続けてきた、その歴史の中には地元の著名人の生前の声や姿、地元ならではの地域

 に親しまれた風習や景観や行事など、やはり将来という物差しで見ると貴重さでは決して劣らない大切な宝物が多くその中

 には有るはずだ。

 民放各社は創立何周年とか開局何周年といった節目に、良く記念誌とか社史を編纂するが、そんな際にでも自社の歴史的な

 財産の発掘にも力を注ぐ努力も今だから必要なのではないだろうか?

 開局当初の社員も今はもう相当な年齢に達し年々失われて行く。

 それと共に局の貴重な財産も失われて行く。

 前向きに未来を志向することも大切だが、最先端技術を駆使して古い良いものを保存するという新旧のバランスがとれた発想

 もまた、大切である。                                     (2002.08.15 記)

◯ 日頃、ラジオやテレビの商業的な展開見通しといった経済記事、放送制度や報道規制などの電波行政や、社会ネタとして

 の放送局の不祥事などの三面記事、そして芸能記事は有っても文化という観点からの、放送の送り手側の姿勢や番組や編成

 批評といった欄が非常に手薄な朝毎読の3大紙だが、この夏は珍しく毎日新聞の夕刊がニュース インサイド「今週の異議

 あり!」という欄を設けて、その中で放送番組に関係する批判のコラムをいくつか記事としていた。

 その一つにコラムニスト天野祐吉さんが 「W杯実況アナ」 (7月9日夕刊) と題して熱狂的日本チームひいきの実況放送

 スタイルを批判している。

 「日本が勝ちさえすればそれで良い」という姿勢はあまりにも貧しい物の見方ではないか?。

 「サッカーを楽しむのに、邪魔になるようなアナウンス」という氏の見方は、いつも民放のプロ野球中継を観る際には音声

 を絞り切って、特定チームのひいき絶叫型のアナウンサーや解説者を抹殺してゲーム観戦をする私にとっては、正に我が意

 を得たりといった意見であった。

 天野氏の意見はテレビのしゃべり方に付いての発言であったが、

 そこで、これに関連・飛躍しての、いつも私が抱いている日本の放送メディアに対する将来の不安。

 盛り上げイベント感覚で「伝えることの本質」を考えずに、偏った身びいき表現や過剰なアクションアナウンスで視聴者に

 対しての単なるアオリ屋となっている現在の一部のアナウンサーや、特定チームにベッタリの解説者、そして、そのような

 放送の制作スタイルを容認というよりも、むしろ奨励している一部放送事業者の姿勢は、国民の公的財産の電波を付託され

 て事業をしているという基本を忘れ、放送ジャーナリズムとしての理念や倫理も欠如して、行き過ぎた自社利益のみを志向

 している商業主義に陥っているように見える。

 特にメディアの経営者の経営姿勢が気になる。

 トップが社会的責任と自らの高潔な品性を社の経営に活かせば、社はおのずから良識のある国民に信頼されるメディアと

 なる、「トップが変われば、社風も変わる」。

 かつてある新聞社のトップが「購読者数のナンバーワンを獲得せよ」とハッパをかけたのに対してライバル社が「我が社は

 紙面の質でのナンバーワンを目指す」と言ったという話がある。

 「品性がイヤラシイ社風となっても勝てばそれで良い」といった誤った競争意識の業界覇権主義、

 「視聴率を獲るためには良識を捨て人に迷惑をかける事はおかまいなし、結果として儲かればそれで良い」といった行き過

 ぎた商業主義は一社のみならず、それと対抗するために他にも波及してメディア業界全体が低俗な品性の欠けたものとなる。

 それが、やがては国民の間でもメディアに対する不信感にもつながり兼ねない。

 そして、もっと憂慮すべきは、そのような姿勢の影に見え隠れするメディアのおごりである。

 「メディア規制法案」に対しての危機感もあり、以前、多くの人たちに規制法案に付いての意見を聞いたことがあったが、

 勿論言論の自由を支持する意見が多い中で、案外と一般の人たちの意見の中にはサメた見方も多くあり、「商道徳無視、

 利益主義の反社会的行為で問題となった企業を正義ヅラして叩くメディア側にも、企業としては同じようなことが内部には

 あるんじゃナイの、目くそ鼻くそのたぐいダゼ」とまで言う人があったことを付記しておく。

                                                (2002.10.13 記)